100%安全な麻酔・手術は残念ながら存在しません。
でも、リスクを減らすこと・100%に近づけることは可能です。
そのためにブリッジ動物病院でどのようなことを行っているのかをご説明していきます。
①体調(元気はあるか、食欲は普段と変わらないか、便の状態,嘔吐の有無、その他)の確認、年齢の確認、雄雌の確認、体重測定、去勢・避妊の有無、女の子なら最後の発情の月日を確認します。
②身体検査:体格(肥満、普通、痩せている)、心音、呼吸音、体温、血色、脱水の有無、リンパ節が腫れていないか、目が充血していないか、目やにが多くないか、痛がっている部位がないかなどを確認します。
③血液検査、レントゲン検査、心電図、超音波検査
検査項目は年齢、手術の種類、身体検査などの結果により判断します。
④以上の結果から手術を実施するか、延期するか、中止するかを判断いたします。また、当院では出来なくてもできる病院があれば紹介させていただきます。
手術の種類(痛みの程度)、年齢、検査結果から麻酔の組み合わせ(鎮痛剤を含め)を考えていきます。全ての動物に同じものを使うわけではないのです。
血圧が下がった、心拍がゆっくりになった、不整脈が発生したなど麻酔中のトラブルは「ドキッと」します。そして早く対応しないといけないと思い焦ってしまいます。焦ると出来ることが出来なくなってしまいます。そうならないために、最初からトラブルは起こるものだと想定し薬剤を用意し投与量も計算して手術の準備をしています。
(もちろん、肝っ玉の太い先生なら大丈夫なのでしょうが、残念ながら僕はそうではないのです)
また、呼吸のトラブル(呼吸が止まったなど)の時のために人工呼吸器を用意しております。
ここでの麻酔とは吸入麻酔(ガス麻酔)のことです。吸入麻酔とはよくドラマの手術のシーンで口からチューブを入れていると思いますが、それが吸入麻酔です。吸入麻酔の長所は麻酔の量を調整しやすく、麻酔を終了すると短時間で覚醒(麻酔から覚めること)することです。欠点は、血管が拡張しやすいので血圧が低くなってしまうことです。
そのためできる限り低用量で使うことが安全につながります。でも痛みがあると最初は効いていた麻酔量では効かなくなります。そのため麻酔量を上げてしまいます。もっと痛みが強くなると麻酔が効かなくなりどんどん麻酔量が上がってしまいます。それに比例して危険度もどんどんどんどん上がっていきます。ではどうするか?その答えは、鎮痛剤を使用することです。そして局所麻酔薬も併用していきます。
そのことで、低用量の麻酔量で手術が行うことができるのです。
まだ痛くないのに「鎮痛剤」と思われるかもしれませんが、痛みが出る前に鎮痛剤を使ったほうが効果的なことが証明されています。専門的な言い方で先制鎮痛法といいます。そしてもちろん手術中にも鎮痛剤を使用します(1~3種類)。もちろん手術後にも使用します。
まとめますと術前・術中・術後と3つのシーンで鎮痛剤を使い分けていきます。術後には鎮静剤を併用することもあります。
この機械一つで8つの項目がモニタリングできます。
①血圧
②心電図:心拍数と不整脈の有無
③呼吸数
④換気量(1回の呼吸で何cc酸素を吸っているか)
⑤SPO2:動脈血中の酸素濃度(飽和度)
⑥ETCO2:動脈血中の二酸化炭素濃度(分圧)
⑦麻酔ガス濃度:体の中麻酔ガス濃度
⑧体温
③~⑥に問題があった場合は人工呼吸器で対応します。
麻酔をかけると体温が下がりますので、それを防ぐために身体を温めます。
写真の青いマットの中を温水が循環します。